25 songs

Baseball cap

うしの中に隠しているんだよ
少年の日の海の匂いを
犬と二人でいつもかけだした
ひとりぼっちは感じてなかった


道を真っ直ぐ抜けて 信号一つ渡ると
並はそこにきっとあって僕を包んだ
ささくれてた何かが丸くなるんだ


作りかけの唄を(あの日からずっと)
オレンジの闇と(風の手触り)
描きかけたままぼうしの中で
僕を待ってる 僕を待っている



うしの中に隠しているんだよ
少年の日の海の景色を
遥かに光る水平線に
うつむいてなんかいられなかった


空は色を変えて 雲の国が浮かび
聞こえない音楽が僕を誘った
小さな謎が解けてゆくんだ


作りかけの唄が(あの日からずっと)
藍色の空と(一番星を)
描きかけたままぼうしの中で
僕を待ってる 僕を待ってる


作りかけの唄を(あの日からずっと)
オレンジの闇と(風の手触り)
描きかけたままぼうしの中で
僕を待ってる 僕を待っている







Given

静かな夜に訪れたすとんと何かが納まった
歩き出す一本の道
降る様な星明かりをただ一つの身体に浴びて


道端の花に優しくされ
さみしさを石ころに預けよう
ココロを渡せるただその事が奇跡の様な宝石の時


今ちっぽけな肩に星屑が宿り
一本の髪も輝いている
目を閉じても歩いてゆける
It was given
Given from the sky



約束を感じてた 遥かな記憶追いこして
差し出したその指先に
痛い程の風のいたわり裸のままのココロに注いだ


遠く流れる雲とはなし
夕焼けに笑ってもらおう
ココロを感じるただその事が奇跡の様な永遠の時


今ちっぽけな方に西風が吹き
一本の髪も輝いてる
耳をすませば唄が聞こえる
It was given
Given from the sky







kiss

時が今 はちみつ色に熟して
二人の間に落ちてきた
こんなに近いくせにもっと知りたい
どうせ言葉じゃどれも役に立たなくて


探す程に迷路に迷い込むから
無駄な抵抗はさっさとおしまいにしよう


まるで答えを見つけたみたいにkiss
当たり前の場所に戻ってゆくようにkiss



ココロがほら熱を放ちながら
小さな部屋を暖めている
何度も聞いたのにもっと聞きたい
選んだ台詞はどれもぴたりとこなくて


探す程に照れくさくなるから
無駄な抵抗はさっさとおしまいにしよう


風の匂いを確かめあうようにkiss
別々の時間をつないでみるようにkiss


二つの温度をとかすようにkiss
当たり前の場所に戻っていくようにkiss







Love song

僕の音が君の言葉を抱き
君のカタコトが僕のギターを誘い
リズムは揺れ始める
2匹のやわらかい猫みたい


僕の唄が君のページをめくり
君の文字を僕の指が爪弾き
メロディーは戯れてく
できたての和音からませて


ふたりのLovesong
夕焼けのワインに染まりながら
ふたりのLovesong
ありったけの星屑撒き散らそう



君の声が僕の詩(うた)を囁き
僕が即興(アドリブ)で君を音楽(おと)に変えて
くちびるにこぼれ出す
何処にもない子守歌になって


ふたりのLovesong
眠りの島に泳ぎつくまで
ふたりのLovesong
ありったけの星屑撒き散らそう


ふたりのLovesong
夕焼けのワインに染まりながら
ふたりのLovesong
ありったけの星屑撒き散らそう







Super star

見た目の派手さばかりが
やけに目に付く今日この頃だけど
「そんなやり方も悪くないな」
口にしたら咳き込んだ


どっからどこまで線を引いたらいいのか
何度も消しゴムで消しては鉛筆は折れてばかりだ


I'm super star 言い聞かせちゃ挫けてばかりだ
I'm super star 心の歓声が「まだまだ、もっともっと」って



見えない場所への心細さも
確かな場所の頼りなさも
斜めに見上げてみりゃ
結構行けそうな坂道だ


シャドウ・ボクシングみたいさ
見えない相手に繰り出すストレートは
どうってこともなく空を切る



I'm super star 言い聞かせちゃ挫けてばかりだ
I'm super star 心の歓声が「まだまだ、もっともっと」って


I'm super star 言い聞かせちゃ挫けてばかりだ
I'm super star 心の歓声が「まだまだ、もっともっと」って







あか

空は赤 ゆっくりと赤
深い青になる前の赤がいい
自転車が赤 一緒に赤
帰り道にあわせて眺める赤


なんだかいいね 二人で片方づつ
そまりながら半分背伸びさ
ゆうやけこやけでなんだかいいね



空は赤 ひっそりと赤
見たことのない魚みたいな赤がいい
自転車も赤 ペダルの音も赤
帰り道がずっとずっと遠くまで赤


なんだかいいね 二人で片方づつ
そまりながら半分背伸びさ
ゆうやけこやけでなんだかいいね







あくび

公園のベンチ 陽だまりの中
ひざを抱えて背中を合わせて
あくびを一つ 大きく二つ
隣であなたもうつって三つ


いつのまにか僕は答えを急いでた
いつのまにか僕の歩くスピードは上がってた

明日晴れたら笑ってみようか
今日の分も昨日の分も



涙が一つこぼれたら
夜空を見上げて明日を選ぼう
言葉じゃダメさ ココロはどこさ
口づさむメロディーを一緒につなごう

いつのまにか僕は言葉を選んでた
いつのまにか僕の喋るスピードは上がってた

頭の上を雲が流れる ヤな事ぁみんな
雲に乗せちまおう


明日の天気は明日眺めよう
答えは後からついてくるさ


今日の分も昨日の分も
ヤな事ぁみんな 雲に乗せちまおう
答えは後からついてくるさ







あなたの町

遠く離れたあなたの言葉が
どんな形でも側にあれば
遠く見知らぬあなたの町
同じ空でつながっていれば


小さな夜に声をひそめて
浮かぶ月夜につぶやいてみる


あぁ、あなたの空へ
あぁ、あなたの町
あぁ、あなたのもとへ
あぁ、届くように



幼いあの日の風の声が
耳をすませば聞こえるだろうか
小さな胸に私のココロは
大きな夢を描いていただろう


飛行機雲のまっすぐさで
とまどいながらも歩いてゆこう


あぁ、あの日の風が
あぁ、あの日の夢が
あぁ、あの日の声が
あぁ、聞こえるように







ココロの部屋

誰もいないのに誰かが呼んでる
窓を開けたらそこに月がある
月の横顔は今夜も優しい
似てないけれど瞳のように澄んでる


分かりにくい呪文はいらない
その香りに揺られて必ず解ける謎


ココロの夜に月がある
いつもレモンの灯りともる
そこに誰もいなくても
引き合う気配がすんでる そっとすんでる



誰もいないのに誰かが唄ってる
ドアを開けたらそこに月がある
月の形は今夜も優しい
祈りの手を合わせた木の実のように丸く


いくつもの色はいらない
光の粉を溶いてほとりとにじむ水彩


ココロの夜に部屋がある
いつもレモンの灯りともる
そこに誰もいなくても
引き合う気配がすんでる そっとすんでる







こんな風景

駅のホーム アパートの階段
小さなパン屋 なんでもない細い道


通り過ぎては消える景色のそこにもあそこにも
いつかの二人がいる これからの二人がいる


もう日が落ちそうだね
ほら 今のあの公園
手をつなぐ影が背高のっぽになって歩いてた



遮断機の前 ウインドウの灯り
花屋の店先 名もない十字路


飛び去っては消える景色のそこにもあそこにも
いつかの二人がいる これからの二人がいる


夜が鏡になってく
ほら すれ違う窓にも
寄り添った影が景色を見ながら映ってた


もう日が落ちそうだね
ほら 今のあの公園
手をつなぐ影が背高のっぽになって歩いてた







つきのふね

月のふねがゆらりゆらり雲の波間を
星をよけてそろりそろり夜に寄り添う


やわらかくふわりふわり明かりをうけて
僕はひっそりうつらうつら夢の中へと


どこかで見た いつだか見た
この場面には確か見覚えがあるんだ
どこかで見た いつだか見た
この場面にはそうだ隣に君がいたんだ


あの日...



水の声をさらりさらり遠くに置いて
耳をすませきらりきらり星の足音


月の涙ほろりほろり声をひそめて
僕の肩にぽつりぽつり夢からさめた


どこかで見た いつだか見た
この場面には確か見覚えがあるんだ
どこかで見た いつだか見た
この場面にはそうだ隣に君がいたんだ


あの日...







ベンチ

春の光あふれる丘の上に
ぽつりとやさしい褪せたベンチがひとつ
ときどき しずかな風がそこから吹いてくる
白い蝶が迷いながら 便り届けにくる


昔そこにすわっていたのか これからたどりつくのか
ときどき わからなくなる 小さなわたしのベンチ


約束は小さな紙に書いて 背もたれにはさんだまんま
風に飛ばされていないなら きっとまだそこにある


道は曲りくねっていても 心がまっすぐならば
きっともう一度見つけられる 小さなわたしのベンチ



雨上がりの濡れた丘の上に
ぽつりとやさしい褪せたベンチがひとつ
ときどき しずかな風がそこから吹いてくる
あじさい色に揺らめきながら はるか流れてくる


昔だれとすわっていたのか それとも一人だったのか
ときどき わからなくなる 小さなわたしのベンチ


あの傘はそっと細くたたんで 背もたれにかけたまんま
誰も気づいていないなら きっとまだそこにある


夢は雲に隠されても 心が行きたいならば
きっともう一度見つけられる 小さなわたしのベンチ


約束は小さな紙に書いて 背もたれにはさんだまんま
風に飛ばされていないなら きっとまだそこにある


道は曲りくねっていても 心がまっすぐならば
きっともう一度見つけられる 小さなわたしのベンチ







ポケット

手が冷たい人は心が暖っかいんだよ
そんな風に比べあうのがいつもの挨拶
木枯らしの中 ポケットに二つの手
だから手袋は一つで足りるんだ


ひゅうひゅう北風 向かい風
色んな事が吹きつけては飛んで行くけど
二人はいつかつないだ手と手になって
同じ温度を分け合ってる


泣いたりしないで きっと大丈夫どんな時も
君が弱くなるとき ポケットに二つの手



手が冷たいのは待ちくびれたからだね
そんな風に「ごめんね」を言うのがいつもの挨拶
木枯らしの中 ポケットに二つの手
缶コーヒー 一ついれて温ったまりあおう


ひゅうひゅう北風 向かい風
色んなものがぶつかっては飛んで行くけど
二人はいつかつないだ手と手になって
同じ温度を分け合ってる


泣いたりしないで 遅すぎたりしないどんな時も
何でも分かってるよ ポケットに二つの手







一枚上手

頭の中をかじりつくしてる
言葉のかたまりに手を焼く
ココロに乗らない文字の残骸
あくびの手つきで口をふさぐ


たいした口調で攻め込んでくる
自分勝手に音を消したら
一枚上手の顔で眺めていようか


上手に並ぶ言葉にたいしたもんだと拍手を送ろう
くじけた素振りでうつむいて傷つきもせず舌を出していよう



赤から青へ色を変えながら
さばく手際のよさに憧れながら
今日の行方を遥かに置いたら
今夜はあなたの言う通り


ソコソコの程度で差し込んでみる
自分勝手に理由をつけながら
一枚上手の顔で負けるのを待ってみようか


上手に並ぶ言葉にたいしたもんだと拍手を送ろう
くじけた素振りでうつむいて傷つきもせず舌を出していよう







曲がり角

ゆっくり手を繋ぎ ゆっくり歩こう
帰る時間が早く来ないように
ゆっくり立ち止まり ゆっくり坂を登ろう
登り切ればきっと夕焼けの中


どうしてかな どうしてだろう
二人それぞれの道を


辿らなければ出会えなかった
さっきの曲がり角



静かに目を見て 静かに話そう
あふれる心震えてるから
静かに息を止めて 静かに目を閉じよう
何処にもない今ここに刻むように


どうしてかな どうしてだろう
二人別々の道を


帰るために立ち尽くす
さっきの曲がり角


どうしてかな どうしてだろう
二人それぞれの道を


辿らなければ出会えなかった
さっきの曲がり角







月の鍵

優しさの明かりの音色が
黒い水面に転がる
愛しき胸のきしみが一つため息をこぼす


はるかな声に足を止めた
夜露に濡れる蝶の夢か


つきのかぎに祈る あの日にかかる橋
遠い行き先たどりながら夜空を渡ろう



眠りの岸辺につまびく
さやけき光 はぐれた唄
途切れた弦の調べが胸のともしびをゆらす


はるかな記憶 波の彼方
切なくまどうはかない舟


つきのかぎに祈る あの日にかかる橋
遠い行き先たどりながら夜空を渡ろう


つきのかぎに祈る あの日にかかる橋
遠い行き先たどりながら夜空を渡ろう







坂道

夕暮れひとり サンダルばきで
自転車ころがし 通りに出れば
手袋忘れた うっかりしてた
戻るほどじゃない このまま行こう


長い坂道 回り道
初めてとおる 知らない道
夕焼けが呼んでる
翼広げたオレンジの馬


とにかくなんとか 歩いてゆけよ
やるだけやったら ここまでおいで


いつもの店で 青い野菜と
一丁百円の 豆腐を買って
ハンドル握れば かじかむ指先
そうだポストに 手紙入れなきゃ


長い坂道 帰り道
だけど今日は 一人の道
夕焼けが呼んでる
風にちぎれた紫の羽根


知らない明日 またやってくる
小さな家へ 帰ってゆこう







四月

彼方から 季節(とき)を超え
足音聞こえていた
風の中 ささやかに花が香っていた
この胸深く 待ちわびていたけれど
心に決めた旅立ちは
その日まで白い光に隠れてる


なんども なんども違う始まりに立つ
こんどこそ 迷わずに歩いてゆこう
誰といても 誰を愛していても
ひとりのわたし
四月のわたしを抱いて



打ち寄せる波のように新しい朝が来て
そのたびに 少しずつ風が変わってゆく
少し遠くて 届かないところに
密かに置いた宝物は
誰も知らず 熱い砂に埋もれている


なんども なんども違う始まりに立つ
こんどこそ 迷わずに歩いてゆこう
何処にいても 雑踏の中でも
ひとりのわたし
四月のわたしを抱いて







終わり良ければ

石ころにつまづいて脱げたサンダル取りに戻ったら
今いた場所 脇見運転のバイク
命拾い そんな訳で今日も生き延びた


終わり良ければ全て良し
終わりなんか待っていられないって それもそうだけど


あの時思い切り泣いたどしゃぶりも
酔っ払って迷惑かけた夜更けもなかったら今の俺はない
君に会った俺はない


見上げればきれいなお月さま 見えるかい?君んところからも
振り向いてため息つくのはほどほどにしとくよ


今ココにあるものが全てなら
あるだけいいさ ないよりいいさ
見つかっただけ きっといいさ だからさ



繰り返してきた日々ある日しっとを見つめ直して
ホントの自分を確かめる勇気 今遅すぎると責められても


終わり良ければ全て良し
終わりなんか待っていられないって それもそうだけど


あの時心折られた悔し涙の夜も しくじって落ち込んだ明け方も
なかったら今の君はない 俺に会った君はない


見上げればきれいなお月さま 見えるかい?君んところからも
振り向いて愚痴を並べるのはココだけにしておこう


今ココにあるものが全てなら
あるだけいいさ ないよりいいさ
見つかっただけ きっといいさ だからさ







春の恋文

風が運んだ 春の匂いに
気付いていても 気付かぬふりで
気付いていても 気付かぬふりで


遠い記憶の優しいベンチ
時の流れに浮かんで届く
時の流れに浮かんで届く


はかない命 変わらぬ想い
風にかざせば 蝶にかわるよ
どこに留まれど君だとわかる



白い恋文 はさまれたまま
青いインクは色あせながら
青いインクは色あせながら


わたしはたたむ 一人の心
いつかの春を消さないように
いつかの春を消さないように


はかない命 変わらぬ想い
風にかざせば 蝶にかわるよ
どこに留まれど君だとわかる


気付いていても 気付かぬふりで
気付いていても 気付かぬふりで







小さな場所

まだ幼い頃 空を見上げれば
不思議に何かそこにありそうな そんな気がして


高く青い空 風に流される雲
手が届きそうな乗れそうな そんな気がして


時が流れても今でも感じる
笑われそうな気持ちさ
吹き抜ける風に遊ばれるように
今日を乗り切ろうと声が聞こえる


遥か彼方の小さな場所に確かな道を刻もう
昨日のコートを脱ぎ捨てたら明日のドアを叩こう


他愛もない今日も明日の為の道



ほら声をかければ通り過ぎた季節が
今日の僕の背中を押す そんな気がして


生まれたての景色 名前のない場所が
約束をどこかで待ってる そんな気がして


手にしたものはいつだってどこか
半分足りないままで
吹き抜けた風が教えてくれた
「君の半分と合わせてごらん」と


遥か彼方の小さな場所に確かな道を刻もう
昨日のコートを脱ぎ捨てたら明日のドアを叩こう


他愛もない今日も明日の為の道







少年

酔っ払ってる けんかも慣れてる
ふてくされてた 笑顔で傷つけられた

唄を作った 唄をうたった
しゃがれた声で酔わせたりもした

だけどその目は曇れない
曇らないんじゃなくて曇れない
あなたは痛みに慣れきれはしない
大人になっても痛みの少年
いつまでたっても痛みの少年


横道それてる 裏道知ってる
お日様まぶしくて夕方まで眠ってた

言葉を探した 言葉を知らなかった
でも知らないことで減ったりもしない

いつもその目は曇れない
曇ったようにみえてちゃんと映してる
あなたは痛みに慣れきれはしない
大人になっても痛みの少年
いつまでたっても痛みの少年







僕は行く

ガタゴトと音を立てて僕の夢は走る
明日のカーブを遠くに眺めて今日の息を切らす
せめて今日を悔やまぬようにと胸を痛めながら
ため息が重なる雲を眺め窓際に肘をつく


あの日見つけた確かなものは
今この胸の中に揺られたまんまさ


僕は行く 地図は持たずに
僕は行く あの日見たあの場所へ
僕は行く 地図は破いて
僕は行く あの日見たあの場所へ



ドカドカと分かったつもりで僕はここまで歩いた
たいしたもんなんて背負っちゃいないと身軽なココロで
ところが強気な顔で向かい風があおる
気が付きゃいつまでたってもグルグルと同じこの場所だ


あの日踏み出したはずの一歩は
そうこの場所で足踏みをしてただけさ


僕は行く 地図は持たずに
僕は行く あの日見たあの場所へ
僕は行く 地図は破いて
僕は行く あの日見たあの場所へ







夕立の前

夏がため息をつくわずかなひとときに
低く下りた雲が心もてあます
鳥はねぐらへ飛び 風は濡れた匂いを運ぶ
乾いた熱が追い立てられてゆく


だけどあんまり痛い程
抱え続けてたから
涙の雨がなかなか落ちない


こんな時一つだけ必要なものがあるなら
傘じゃないのは確かさ
ただ隣で ただ黙って
降り始めの時を待とうよ 夕立の前



風が暑さに眠る八月をさまして
鉛色の雲が心もてあます
誰もが急ぎ足になり 淀んだ野生がふと蘇る
少しの望みと諦めを混ぜて


だけどあんまり長い事
抱えすぎてたから
涙の雨がなかなか落ちない


こんな時一つだけ必要なものがあるなら
傘じゃないのは確かさ
ただ隣で ただ黙って
降り始めの時を待とうよ 夕立の前







帰り道

うすく月の影がぽかり浮かぶ空
仕事帰りの道 いつもの道
小さなため息 一つ 二つ
時折過ぎて行く優しい風


次の角を曲がれば ほら
交差点 信号待ち 君の笑顔


交わす言葉もなく 歩く夕暮れ
つないだぬくもり離さぬよう



君が口ずさんでる誰かの唄
僕はあくび一つ 見上げた空
いつからだろうこんな風景
小さな坂道 帰り道


次の角を曲がれば ほら
踏み切り 鐘の音 慌てる君


夕暮れの似合う街 この坂道
つないだぬくもり離さぬよう


交わす言葉もなく 歩く夕暮れ
つないだぬくもり離さぬよう